イケベ楽器店 WSR 額田誠氏からのコメント

額田誠氏

ここではフレットポリッシャーを使ってくれている、ギタリスト、アーティスト、プロフェショナルギタークラフトマン、リペアーマン、等現場でのこの商品を使ったことに対するプロの意見、コメントを随時、紹介したいと思います。
イケベ楽器、WSRリペアチーフの額田誠氏からのコメントです。

WSRより”もっと”愛を込めて #68「楽器のケアグッズについて②」2015年8月3日 | WSRより“もっと”愛を込めて |

皆さんこんにちは。
今回は先月に引き続き、楽器のケアグッズの続きです。

フレット磨き

新品の状態のフレットは時間と共に酸化していきます・・・。汗や手垢がこびり付いたまま放置すると、酸化のスピードは速くなり、ひどくなると緑青やさびが出て、ざらざらとしてくるので、ベンディングやヴィブラート時に弦のすべりが著しく悪くなります。

近年、ステンレス出回っているステンレス製のフレットは酸化しにくいので、殆どメンテナンスの必要が無いのですが、ニッケルのフレットは定期的にメンテナンスをして、いつも光沢のある状態を保ってあげたいですね・・・。
フレット磨きのグッズも色々なものを使ってきましたが、過去はなかなか良いものが無かったんですよね・・・。

一般的に良く使われるスチールウールの#0000番だと、大変細かく、仕上がりも非常にきれいになるのですが、フレットを磨くたびにボロボロと散っていく鉄粉が非常に厄介で、後始末に時間がかかります。
液体や半練り状のコンパウンドだと、量の加減が難しいです・・・。少なすぎると磨けませんし、多すぎると、どうしてもフレットと指板の間にコンパウンドが入り込んでしまって取れないんですよね。磨き終わった直後に良しとしても、時間が経って乾いたときに分かります。
扱い易さとコストパフォーマンスを考えると、今、工房で使用しているものになるかな?と思います。フレットの状態に応じて、3種類を使い分けています。

Fret Polisher

以前ご紹介した「セラポブロック」という商品と「セラポスティック」という商品が楽器用に商品化されています。元々は歯医者さんで歯のクリーニングに使う研磨砥石らしいです。

一般的な研磨砥石はペーパーやスポンジの表面に接着剤で砥粒を貼り付けているので、研磨の度に砥粒が剥がれ落ちてしまい、研磨性能が下がってしまいますが、こちらはゴム全体に砥粒を埋め込んであるので、使い続けても砥粒が剥がれずに研磨性能が下がってしまうことはありません。私たちはブロックタイプのものを一年ほど使っていますが、全くと言って良いほど減ってませんね・・・。#500番と表記されていますが、実際には#1000番以上の細かさだと思います。使い続けても研磨性能が下がらないことから、緑青やさびの出た酸化の激しいものに使っています。

スポンジ研磨材

スチールウールの使いにくさがどうにかならないものか?という事で、3Mの自動車補修製品カタログから見つけた商品です。
スポンジに砥粒を貼り付けてあるので、フレットの曲面にも上手く密着してくれて大変使い易いです。

砥粒が剥がれ易いので、コストパフォーマンスはあまりよくありませんが、作業性は大変高いです。今はコレを使っている工房さんも多いのではないでしょうか?
「MICRO FINE」「ULTRA FINE」それぞれ#1500番と#1000番相当を緑青やさびの出ていないフレットの酸化の度合いに応じて、使いわけています。

金属磨きクロス

クロスに研磨剤とWAXが含まれているもので、大変扱い易く入手も容易です。前の2つと違って、WAX成分が含まれているので、高い光沢感が得られます。
あまり酸化しているものに使ってしまうのはもったいないので、少し曇っている程度のフレットやFret Polisherやスポンジ研磨材で研磨した後の最終仕上げに使用しています。

・・・というのがWSRで使用しているフレット研磨製品ですが、実際に使用する場合は、指板にマスキングをする事、研磨の方向は1F~最終フレット方向に研磨するのではなく、1弦~6弦方向に研磨すると、滑らかなフレットに仕上がると思います。

額田誠氏 プロフィール

池部楽器という小売店にWSRを設立し、自らの技術、観念を楽器に主張しつづける男。精度や仕事の丁寧さにはプロアマ問わず定評がある。